PLAY〜アイドルイメージビデオレビュー〜【Reprise】

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【コラム_20】イメージビデオ『優香 Breath』を教えてくれた『彼』との記憶

 高校時代に寺尾友美のイメージビデオ『Pichi-Pachi』を手にいれ、僕はアイドルのイメージビデオの魔力にすっかりハマってしまったのだけれども(【コラム_1】はじめての出会い 寺尾友美『Pichi-Pachi』)、それから約5年後の20代前半の頃の話。

 
 当時フリーターだった僕は、セブンイレブンで深夜のバイトをしていた。

 少年誌は毎週可愛いグラビアアイドルが表紙を飾っていて、その中でも一際輝いていたのは、ホリプロのグラビアアイドル、優香だった。


 無邪気な笑顔に、Fカップのバスト。健康的なスタイルで、いろんな雑誌の表紙を飾っていた。
 そんなキラキラと輝くグラビアアイドルを横目に、深夜のアルバイトという過酷な仕事をこなしていた。

 週に5〜6回もハードにシフトインしていると、自ずとお客さんからも顔を覚えられるようになってきた。


 中には女の子と仲良くなって飲みに行ってからセックスしたり、まあフリーターなりにも美味しい思いもさせてもらったこともある。

 ちなみにその子には僕よりも全然大人の不倫相手がいて、その後は全く相手にされなかったけど。


 20代前半という年齢もあってか、男女関係なくお客さんと仲良くなることが多く、その中の一人、25歳くらいの男性と知り合った。
 髪の毛は長く後ろで結んでいて、黒縁の眼鏡。わりと長身で痩せ型の、オダギリジョーのような風貌の青年。

 いつも深夜に黒のTシャツと短パンというシンプルでラフな格好で現れ、髭も伸ばしていた。

 来る時間も来る時間なので、おそらく普通の会社員ではなかったと思う。


 そんな彼に、一度だけ「家に来て飲まないか?」と誘われることがあった。


 若い男を部屋に誘うなんて、もしかしたらそっち系の趣味があるのでは…とやや勘ぐりはしたものの、人当たりがよく、感じも良く悪い人には見えなかったので、僕は働いているコンビニでビールを6本ほど買い込み、その彼の部屋へと向かった。


 「いらっしゃい」

 コンビニで挨拶するのと同じく、彼はにこやかに僕を迎えてくれ、8畳ほどのワンルームに案内してくれた。当時僕は6畳の1Kの木造アパートに住んでいた。彼はというと、鉄筋コンクリートのマンション。彼の風貌からは意外にも、家賃が高そうな部屋だった。


 さらに異様だったのは、その部屋のレイアウトだった。


 フローリングの部屋に、ブラウン管の大型テレビとビデオデッキ。


 大型テレビの真正面には、一人掛けの革張りのソファ。(それはまるで王座のように見えた)


 そして大型テレビの両サイドには、大量のVHSのビデオテープと、ハードカバーの書籍がノンジャンルで積み重なっていた。


 部屋にはそれ以外には何もなく、テーブルも、ベッドも、衣服も何も置いていなかった。


 そんな異様な空間に最初は面食らった。僕の住んでいたアパートの部屋とはまるで違う、全く生活感のない空間だったからだ。


 そこで僕らはビールを飲みながら、色々ななことを話した。当時の音楽や映画の話。

 90年代当時、僕はUKロックに傾倒していて、おそらく彼ともそんなところの趣味があったのだと思う。

 オアシスやブラー、ケミカルやアンダーワールド、ストーン・ローゼズにプロディジー。パルプやシャーラタンズ、スウェードなどなど。

 その日の夜は、そんな音楽について熱く語っていたのではないかと記憶している。

 

 彼の仕事やプライベートについて、聞くことはなかった。

 ただ、娯楽といえばテレビ見るか、積み上がったビデオを見るか、小説を読むくらいだろう。ということは想像ができたのだが、彼が普段一体どんな生活を送っているのか、ますますわからなくなっていた。

 いつもコンビニで買っているインスタント食品や、弁当のゴミすらなく、というか、その部屋にはゴミ箱すらなかった。


 ビールを何本か開け、話が落ち着いた後、2人ともやや手持ち無沙汰になった。

 僕はフローリングに座り込み、テレビ横に積まれたビデオを眺めていた。その視線に彼が気がつき、「なんか見る?」と聞いてきた。

「そうだね。何がいいかな」


 テレビの両サイドに積み上がったビデオのラベルを眺めていると、そこにはセンスの良い洋画、小津や黒澤明のような名作の邦画、ミュージックヴィデオなどがバラバラに積み重なっていた。なるほど、彼の趣味はこういう感じなんだなと感心しながら。

 また、それらはレンタル落ちやダビングされたものではなく、すべて正規の販売用のビデオであるように見えた。

 

 その中に、『優香 Breath』と書かれたジャケットを見つけた。

 

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 映画やミュージックヴィデオの間に挟まっていた『優香』のその文字は、一際異彩を放っていた。


 また、そこにグラビアアイドルのイメージビデオがあるとは、彼の映画や音楽のチョイス。そして彼の芸術家のような風貌からはおおよそ想像がつかなかったからだ。


 冒頭に書いたように、僕はかつて寺尾友美のイメージビデオをコンビニで購入し、何度も何度も繰り返しみた。

 いつしかその寺尾友美のビデオもちょっとした手違いにより手放してしまい、それからイメージビデオの事などすっかり忘れていたのだけれど、『優香 Breath』というVHSの裏表紙を見た瞬間に、変なスイッチが入ったというか、不思議な感情が込み上げてきたのだ。


 いつもコンビニの雑誌の棚に陳列する際に、優香はあらゆるパターンで微笑みかけてきた。

 しかし彼女の動く姿や喋る声は聞いたことがなかった。

 どんなビデオなんだろう。。

 僕はその優香のパッケージが気になって仕方なくなってしまったのだ。


 ただ、その時は優香のビデオが見たいとは最後まで言い出せず、UKロックのミュージック・ビデオをチョイスしつづけた。

 

 そもそも、男二人でイメージビデオを見ながら飲むなんて発想はなかったけれども。

 その時に僕がこの優香のビデオを見たいと言ったら、「いいね。見よう」と言っただろうか?


 夜も更け、ビールも飲みきり、そして話も尽きた頃。

 「そろそろお開きにしよう」と僕が立ち上がった時に、「何か見たいものがあれば貸してあげるよ」と、彼は提案してきた。

 「あのさ」

 僕はこれを貸して欲しい。と、優香のビデオを指差した。

 彼とその夜、グラビアアイドルの話題など一切しなかったし、僕がグラビアアイドルに興味があるとも知らなかっただろう。


 しかし彼は驚く素振りも一切見せず、「ああ、優香ね」と、積み重なったビデオを慎重に崩し始めた。

 彼はニヤリとするわけでもなく、名作映画や音楽をおすすめするのと同じテンションで「これはいいビデオだよ」と言って僕に『優香 Breath』と書かれたジャケットを渡してきた。

 僕がこのジャケットに目を奪われていたことに、彼は気がついていたのかもしれない。


 帰り際、僕はやはりこの部屋のこと、彼が普段彼が何をしているかがどうしても気になって、彼に「君はいったいどんな仕事をしているんだ?」と聞いた。


 しかし彼は言葉を濁しながら「どうだろう。敢えて言うならお金に関する仕事、かな。もっとも、全ての仕事はお金に関する仕事だろうけど」

 と応えた。

 「そうなんだ」


 僕はそれ以上はなにも聞くことができず、彼の部屋を後にした。

 

 夜もすっかり更け、僕は優香のビデオを片手に自分の安アパートへと帰った。

 酔っていたのと眠かったのとで、家に帰ってすぐにベッドで眠りについたと思う。

 

 朝起きて、僕はさっそく彼に借りた『優香 Breath』のビデオを再生した。

 そこにはイメージ通り、元気いっぱいにはしゃぐ優香が映し出されていた。


 その後、彼に優香のビデオをちゃんと返却したとは思うが、そのやりとりについて、詳しくはは覚えていない。

 また、UKロックや名作映画と同じように、優香について、グラビアアイドルについて熱く語った記憶もない。彼とはそれから特別仲良くなったわけでもなく、気付かぬうちに、関係性は消滅していた。


 それから数十年経ち、僕はたびたびあの日の夜の事を思い出す。

  

 あの全く生活感のない部屋は本当に存在したのだろうか?


 彼から『優香 Breath』を借りたことで、僕のイメージビデオ熱が再燃したことはさておき…僕はこの『優香 Breath』を観るたびに、彼のことを思い出す。


彼は一体何者だったのだろうか?


そして彼は今何をしているのだろうか。気になって仕方がないのだ。

 

(※ 『優香 Breath』は現在は廃盤となっている)

 

執筆日 2021-06-08

 

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